どうすれば長期間劣化しないか――そのための工夫がすべての設計の基本にあります。

名古屋市科学館の天体ドームの秘密

この天体ドームの最大の特徴は、三段屋根の車輪構造にあります。この三段屋根は絶対に落下しない構造であり、左右にずれることもありません。常に自動的に中央に位置するように設計されています。この原理は、かつて東京・上野動物園にあった吊り下げ式モノレールから着想を得ています。三段屋根は左右のレールに車輪があり、その車輪に屋根がぶら下がっている構造です。今度、名古屋市科学館の屋上にある天文台に行かれる際は、ぜひご覧ください。

雪が積もらない天体ドームの秘密

山形県飯豊町は、多いときには6メートルもの積雪がある地域ですが、ここにある5メートルの天体ドームには雪が積もりません。融雪装置は使っていません。その理由は、スリットドアの形状にあります。通常のスリットドアは最上部が水平に近い形をしていますが、飯豊町の天体ドームはウルトラマンの頭のように尖った形をしており、雪が積もることなく自然に滑り落ちる構造です。

ドームに剛性が必要な秘密

天体ドームの設計において、球形部分とスリットドアの形状が基本です。開閉方式は上下開閉式と水平両開き式に大別されます。構造的に重要なのは、球形部分の剛性と板金の貼り方にあります。弊社では、球形部分をブロック構造とし、全体に鋼板を溶接して剛性を高めています。これにより、回転時に発生しがちなスリットドアの重量によるねじれが防止されます。他社製と比較して約40%軽量でありながら、非常に高い剛性を持つドーム構造が実現されています。

雨が漏らない秘密

雨漏りを防ぐ要因は、球形ハゼ折板金工法にあります。板金の端をU字型に加工し、隣接する板金と互いに噛み合う構造にすることで、ステンレス板だけが外部に露出します。劣化しやすいコーキング材などは使用されていません。また、両開き式スリットドアの構造にも工夫があり、降った雨は中央の雨樋部に集まらず、スリットドアの両端が25mm低くなっており、雨水が外側に流れるよう八の字型に設計されています。さらに、スリットドア中央の雨樋構造は弊社独自の4重構造となっており、ホースで直接水を流して行った防水テストでも、一切の水の侵入は確認されませんでした。

夏でも天体ドームが熱くならない秘密

望遠鏡は夜間の外気温と同じ温度に保つ必要があります。なぜなら、温度差があると空気の揺らぎ(湯気越しのような現象)が発生し、観測に支障が出るからです。夏の天体ドームはまるで物置小屋のように熱がこもります。弊社では、熱い空気が望遠鏡に触れないよう、スリットドア上部にソーラーベンチレーター(太陽光換気扇)を取り付け、最も高い位置から熱を排出する仕組みを採用しています。実験結果では、換気装置なしではドーム上部・下部ともに38度だったのが、換気装置使用時には上部38度・下部28度と10度の差が出ており、夜間の外気温に近づいています。名古屋市科学館にも12基のソーラーベンチレーターが設置され、稼働中です。